肝・消化器疾患対策委員会

肝・消化器疾患対策委員会のご紹介(2021/04/01)

・委員会の設立時期および設立目的
 今世紀に入り、我が国の多くのC型慢性肝炎・肝硬変患者が発がんの時期に達し、年間約3万人が肝がんにより死亡する状況でした。臨床の現場において慢性肝炎と肝硬変・肝がんの知識を啓発し病診連携を進めるため当委員会は平成14年(2002年)に「神奈川肝炎対策委員会」として発足しました。当初その活動の中核は、当時の神奈川県立がんセンター顧問 多羅尾和郎先生と当時の神奈川県内科医学会会長 中山脩郎先生の主導で平成16年(2004年)に始まった「肝がん撲滅を目指す病診連携の会」(のちに「肝臓病を考える病診連携の会」と改名)のサポートを行うことでした。平成21年(2009年)に多羅尾先生が委員長就任後に活動の幅が広がり、「肝炎対策特別講演会」の開催、「市民公開講座」の共催、小冊子「これだけは知っておきたいC型・B型肝炎の知識」の定期発行や「ウイルス肝炎患者掘り起こし事業」まで活動の幅が広がってきています。平成30年(2018年)より、肝疾患のみならず消化管を含めた、消化器疾患全般に対策を広げるため、委員会の名称を「肝・消化器疾患対策委員会」と改めました。

・主な活動の状況
【肝臓病を考える病診連携の会】
 臨床の現場において慢性肝炎と肝硬変・肝がんの知識を啓発し病診連携を進めるため、神奈川県の5つの地区(横浜、川崎、横須賀、平塚、相模原)を順番に回りながら、原則年2回(初夏と秋)開催しています。

【小冊子「これだけは知っておきたいC型肝炎・B型肝炎の知識」の刊行】
 急速に進歩する肝炎治療の新情報をすばやく、わかりやすく、より多くの治療者に周知するために、委員によって分担執筆された小冊子です。実際の診療に役立つ内容とするため、医学的な内容に加えて、保険請求上の注意点や肝炎治療の医療費助成制度などの情報も載せるなど、特徴ある冊子となっています。
 平成29年(2017年)に神奈川県内科医学会の創立50周年の節目を迎えるにあたり、記念事業の一環として、当委員会の委員の分担執筆によって、C型肝炎・B型肝炎のみならず肝疾患全般をカヴァーする内容の書籍「これだけは知っておきたい肝臓病の知識」を出版しました。

【横浜内科学会 肝疾患抽出事業】
 肝障害の原因としては、ウイルス性肝炎や脂肪肝、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎など様々ありますが、自覚症状が乏しいため適切な時期に治療を受ける機会を逃してしまい、肝硬変や肝がんに進展してしまう恐れがあります。ましてや日頃何らかの疾患で医療機関に通院している患者で、そのような事態が生じれば、最悪の場合訴訟問題に発展するかもしれません。そこで、かかりつけ医がその患者に肝障害を認めた場合、初期の段階でどのように対応するかが重要ですが、肝機能異常の原因検索は複雑で、また保険診療上の制限もあり、診断に難渋することが多いのではないでしょうか。
 このような問題に対応するべく、肝臓の非専門家にとっても扱いやすい、できる限り簡便な「肝疾患抽出簡易検査シート」を横浜内科学会で作成して、非肝臓専門医あるいは職域において、気づかれないまま放置されている肝疾患患者を発見し治療に導くために「肝疾患抽出プロジェクト」として横浜地域を中心に活動を広げています。

・今後の活動目標
 ウイルス肝炎(とくにC型肝炎)に対する極めて有効な治療法が確立された現在ではありますが、自らの感染を知らない潜在患者や感染を知りながら最新治療を受けていない患者の数はまだまだ多いのではないでしょうか。進歩した肝炎治療を受けていただくためには、実地医家や一般市民への啓発活動を継続的に行っていくことが重要と考えています。
 その一方で脂肪肝・脂肪肝炎の患者数は増加の一途をたどっており、現在のところ食事療法・運動療法以外の有効な治療法がない状況です。将来これらの疾患による肝硬変や肝がんの多発が危惧されるため、最新の知見を含めた情報発信にも力を入れていきたいと思います。
 また肝疾患以外の消化器疾患領域についても活動の幅を広げていきたいと考えています。

・その他
 神奈川県内科医学会は2017年に創立50周年を迎えました。その記念事業の一つとして肝・消化器疾患対策委員会の委員による分担執筆による書籍「これだけは知っておきたい肝臓病の知識」を出版しました。一般臨床で出会うことの多い肝疾患について最新の知識をわかりやすくまとめたお勧めの一冊です。ぜひご購入いただいて、日常診療に役立ててほしいと思います。

横浜内科学会「肝疾患鑑別の簡易検査チェックシート」(PDF)

神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会  (資料PDF)
平成30年11月20日(火)19:30~ 神奈川県総合医療会館
1.開会
2.挨拶
3.議題
(1)創立50周年記念出版「これだけは知っておきたい肝臓病の知識」の配布・販売について(資料1)

(2)第32回日本臨床内科医学会(神奈川)の委員会講演枠とポスター発表
【ポスター発表】(資料2)
K-2 「神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会のあゆみ」 肝・消化器疾患対策委員長 岡 正直
K-3 「横浜内科学会肝疾患抽出事業について」 肝・消化器疾患対策副委員長 永井一毅 先生
【講演】 座長 岡 正直、永井一毅 先生
レクチャー4-2 「C型肝炎からNASHへ」 横浜市立大学附属病院・肝胆膵消化器病学 診療教授 斉藤 聡 先生
副作用の多いインターフェロンから直接作用型抗ウイルス薬による治療に代わって後、C型慢性肝炎ウイルスはほぼ100%消滅可能になったが、まだ問題点が残されている。少数ではあるが1型2型以外の型のウイルスの存在、保険適応のセロタイプ検査と保険適応のないゲノタイプ検査結果の不一致による薬剤選択の誤り、HIV感染合併者、肝移植後患者、非代償性肝硬変患者などである。
治療の進歩の一方で多くのC型肝炎と診断されていない潜在患者や診断されながら未治療の患者が取り残されている。さらに強力な啓発活動を行うことが重要である。近年肝癌の原因疾患として非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が注目されている。線維化の進行とともに発癌リスクが上昇するため、FIB4 indexなどの臨床で使いやすい指標を活用したり、FibroscanやMREなどのElastographyにより線維化の評価を積極的に行うことである。「脂肪肝」として放置していると、取り返しのつかない事態になる恐れがある。NASHに対する特効薬がない現状において、肥満者に対する生活習慣改善は大きな意義を持つ。7%の体重減少により肝機能のみならず肝線維化の改善も見られるという。肝疾患診療の大変革を学んだ密度の高い講演であった。(日臨内ニュースの取材記事より)

(3)肝臓病を考える病診連携の会~肝がん撲滅を目指して~
(3-1)第28回 平成30年6月16日(土)(資料3)
(3-2)第29回 平成31年6月頃 担当 第4地区
大日本住友製薬来年度当番終了後脱退の意向あり

(4)横浜内科学会肝疾患抽出事業の進捗状況について(永井一毅 先生)

(5)「いままで言えなかった本音の講演会」の企画について(資料4)
5月25日または6月22日(土)15:00~18:00 関内新井ホールにて

(6)消化管分野の委員の増員と消化管分野の勉強会の企画について

4.次回開催  平成31年   月   日 ( 火 ) 19:30~
参考:平成30年4月24日(火) 19:30~


肝・消化器疾患対策委員会のあゆみ
横浜内科学会 肝疾患抽出事業について

第32回日本臨床内科医学会に臨んで
(日本臨床内科医会ニュース編集委員会によるアンケートへの回答)

・委員会の設立時期や設立目的を教えてください
今世紀に入り、我が国の多くのC型慢性肝炎・肝硬変患者が発がんの時期に達し、年間約3万人が肝がんにより死亡する状況であった。臨床の現場において慢性肝炎と肝硬変・肝がんの知識を啓発し病診連携を進めるため当委員会は平成14年(2002年)に「神奈川肝炎対策委員会」として発足した。当初その活動の中核は、神奈川県立がんセンター顧問 多羅尾和郎と神奈川県内科医学会会長 中山脩郎の主導で平成16年(2004年)に始まった「肝がん撲滅を目指す病診連携の会」(のちに「肝臓病を考える病診連携の会」と改名)のサポートを行うことであった。平成21年(2009年)に多羅尾が委員長就任後に活動の幅が広がり、肝炎対策特別講演会の開催、市民公開講座の共催、小冊子「これだけは知っておきたいC型・B型肝炎の知識」の定期発行やウイルス肝炎患者掘り起こし事業まで活動の幅が広がってきている。平成30年(2018年)より、肝疾患のみならず、消化器疾患全般に対策を広げるため、委員会名称を「肝・消化器疾患対策委員会」と改めている。

・主な活動状況を教えてください(活動の目的も含めて)
【肝臓病を考える病診連携の会】
臨床の現場において慢性肝炎と肝硬変・肝がんの知識を啓発し病診連携を進めるため、神奈川県の5つの地区(横浜、川崎、横須賀、平塚、相模原)を順番に回りながら、原則年2回(初夏と秋)開催している。
【小冊子《これだけは知っておきたいC型肝炎・B型肝炎の知識》の刊行】
急速に進歩する肝炎治療の新情報をすばやく、わかりやすく、より多くの治療者に周知するために、委員によって分担執筆された小冊子である。実際の診療に役立つ内容とするため、医学的な内容に加えて、保険請求上の注意点や肝炎治療の医療費助成制度などの情報も載せるなど、特徴ある冊子となっている。
平成29年(2017年)に神奈川県内科医学会の創立50周年の節目を迎えるにあたり、記念事業の一環として、当委員会の委員の分担執筆による、C型肝炎・B型肝炎のみならず肝疾患全般をカヴァーする内容の書籍「これだけは知っておきたい肝臓病の知識」の出版を企画した。
【横浜内科学会肝疾患抽出事業】
肝機能障害の原因は、ウイルス性肝炎や脂肪肝、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎など様々であるが、自覚症状が乏しいため適切な時期に治療を受ける機会を逃してしまい、肝硬変や肝がんに進展してしまう恐れがある。ましてや日頃何らかの疾患で医療機関に通院している患者で、そのような事態が生じれば、最悪の場合訴訟問題に発展するかもしれない。そこで、かかりつけ医で肝機能障害を認めた場合、初期の段階でどのように対応するかが重要であるが、肝機能異常の原因検索は複雑で、また保険診療上の制限もあり、診断に難渋することが少なくない。
このような問題に対応すべく、肝臓の非専門家にとっても扱いやすい、できる限り簡便な「肝疾患抽出簡易検査シート」を横浜内科学会で作成し、非肝臓専門医あるいは職域において、気づかれないまま放置されている肝疾患患者を発見し治療に導くために「肝疾患抽出プロジェクト」として横浜地域を中心に活動を広げている。

・今回の医学会での発表に至るまでの経緯を教えてください
当委員会から3つのレクチャーおよびポスター発表を行った。
【レクチャー4-2】
「C型肝炎からNASHへ」
神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会 委員(1)
横浜市立大学附属病院・肝胆膵消化器病学 診療教授(2)
横浜市立大学附属病院・肝胆膵消化器病学(3)
斉藤 聡(1,2,3)、
米田正人(3)、今城健人(3)、小川祐二(3)、結束貴臣(3)、本多 靖(3)、中島 淳(3)
【ポスター発表K2】
「神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会のあゆみ」
神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会
岡 正直、
永井一毅、宮本 京、多羅尾 和郎
【ポスター発表K3】
「横浜内科学会肝疾患抽出事業について」
神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会(1)
横浜内科学会(2)
アズビル株式会社(3)
横浜市立大学附属 消化器内科肝胆膵消化器病学(4)
永井一毅(1,2)、
岡 正直(1,2)、高橋 裕(2)、今井鉄平(3)、斉藤 聡(1,4)

・今後の活動目標を教えてください
ウイルス肝炎(とくにC型肝炎)に対する極めて有効な治療法が確立された現在ではあるが、自らの感染を知らない潜在患者や感染を知りながら最新治療を受けていない患者の数は多い。実地医家や一般市民への啓発活動を継続的に行っていくことが重要と考えている。
その一方で脂肪肝・脂肪肝炎の患者数は増加の一途をたどっており、現在のところ食事療法・運動療法以外の有効な治療法がない状況である。将来これらの疾患による肝硬変や肝がんの多発が危惧されるため、最新の知見を含めた情報発信に力を入れていきたい。
今後、肝疾患以外の消化器疾患領域についても活動の幅を広げていくことを考えている。

・その他  (会員へ向けてのご意見、今、訴えたいことなど)
神奈川県内科医学会は2017年に創立50周年を迎えた。記念事業の一つとして肝・消化器疾患対策委員会の委員による分担執筆による書籍「これだけは知っておきたい肝臓病の知識」が出版された。一般臨床で出会うことの多い肝疾患について最新の知識をわかりやすくまとめたお勧めの一冊である。ぜひご購入いただいて、日常診療に役立ててほしい。