心臓血管病対策委員会

「心臓血管病対策委員会」のご紹介(2021/04/01)

・委員会の設立時期や設立目的
 国の重点課題である5疾病6事業の一つである心筋梗塞などの循環器疾患における病診連携は、内科医にとって重要な課題です。超高齢社会を迎え、生命の維持に直結する循環器疾患は、冠循環、弁膜疾患、大動脈瘤、末梢動脈閉塞、重症心不全、心房細動・不整脈管理など急性期には迅速な入院加療・リハビリテーションが必須です。新規循環器疾患の発症予防、循環動態が安定した段階での再燃予防には、実地医科が、感染症、心不全、血圧、糖・脂質代謝管理などをきめ細やかに対応することが、健康寿命延伸に必要不可欠となっています。一方で日進月歩の早い循環器疾患治療は、病院のスペシャリストと実地医科の臨床スキルギャップの大きい領域でもあり、これらの溝を埋めるためにも、勉強会、症例検討会を通して実地医科の臨床レベルをあげることが大事であると考え、2014年3月に心臓血管病対策委員会を設立しました。

・委員会の事業背景
 2018年12月に、脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法が公布、2020年10月「循環器病対策推進基本計画」が策定されました。その全体目標は、1)循環器病の予防や正しい知識の普及啓発、2)保健、医療及び福祉に係るサービスの提供体制の充実、3)循環器病の研究推進、に取り組むことにより、2040年までに3年以上の健康寿命の延伸、年齢調整死亡率の減少を目指して、予防や医療、福祉サービスまで幅広い循環器病対策を総合的に推進する、となっています。
 個別施策として、1)は、循環器病の発症予防及び重症化予防、子どもの頃からの国民への循環器病に関する知識(予防や発症早期の対応等)の普及啓発、
2)は、①循環器病を予防する健診の普及や取組の推進 ? 特定健康診査・特定保健指導等の普及や実施率向上に向けた取組を推進、②救急搬送体制の整備 ? 救急現場から医療機関に、より迅速かつ適切に搬送可能な体制の構築、③救急医療の確保をはじめとした循環器病に係る医療提供体制の構築 ? 地域の実情に応じた医療提供体制構築、④社会連携に基づく循環器病対策・循環器病患者支援 ? 多職種連携し医療、介護、福祉を提供する地域包括ケアシステム構築の推進、⑤リハビリテーション等の取組 ? 急性期?回復期、維持期・生活期等の状態や疾患に応じて提供する等の推進、⑥循環器病に関する適切な情報提供・相談支援 ? 科学的根拠に基づく正しい情報提供、患者が相談できる総合的な取組、⑦循環器病の緩和ケア ? 多職種連携・地域連携の下、適切な緩和ケアを治療の初期段階から推進、⑧循環器病の後遺症を有する者に対する支援 ? 手足の麻痺・失語症・てんかん・高次脳機能障害等の後遺症に対し支援体制整備、⑨治療と仕事の両立支援・就労支援 ? 患者の状況に応じた治療と仕事の両立支援、就労支援等の取組を推進、⑩小児期・若年期から配慮が必要な循環器病への対策 ? 小児期から成人期にかけて必要な医療を切れ目なく行える体制を整備、3)は、基礎研究から診断法・治療法等の開発に資する実用化に向けた研究までを産学連携や医工連携を図りつつ推進 ? 根拠に基づく政策立案のための研究の推進、となっています。
 これらの施策は、当委員会の活動方向を示しており、委員会として出来る事から進めて行きたいと考えています。

・委員会の主な活動状況について
1)循環器疾患の啓発
  実地医科を主な対象に、年2回の学術講演会を開催、各地区における循環器疾患の講演会および市民公開講座の後援を行っています。
  更に糖尿病対策委員会、リウマチ・膠原病対策委員会、健康長寿社会を目指す委員会、メディカルコミュニケーション委員会などと合同で、垣根を越えた講演会を開催しました。
2)心臓病における病診連携
  神奈川県循環器救急レジストリーのサポートを行っています。
  厚生労働科学研究班作成「かかりつけ医のための心不全診療ガイドブック」について、実地医科としてモニター参加しました。
3)循環器疾患における実態調査
  心房細動における抗凝固療法の有効性安全性実態調査(ASSAF-K)を2013年開始、県内の医療機関(4014症例、105施設)が参加し2018年終了。日本循環器学会総会、日本心臓病学会総会にて発表、2020年3月シカゴでの米国心臓病学会(ACC)にて総括発表となりました(COVID-19感染拡大にてVITUAL開催)。
  現在、聖マリアンナ医科大学薬理学教室と共同で、「2型糖尿病合併慢性心不全患者のSGLT2阻害薬による心不全の治療効果に関する、後ろ向き観察多施設共同研究」を開始しています。