学会散歩道~港町を楽しむために~

神奈川で行われる学会場は、「みなとみらい」にあります。国際貿易港として、世界の人・モノ・文化の交流拠点を担ってきました。この場所は、三菱重工業横浜造船所、国鉄高島線(貨物支線)の東横浜駅・高島駅・高島機関車操車場、高島埠頭、新港埠頭などの跡地です。造船所の跡地と一見して理解できるドックヤードがあり、時折コンサートも開かれます。その横の広場では夕方になると、大道芸人がさまざまな得意技を披露して喝采を浴びています。火を噴いたりジャグリングをしたり、時を忘れるほどの技の数々です。
横浜港は幕末にペリーが黒船で来航し、開港されたのを機に日本最大級の国際貿易港となりました。以後、全国に文明開化の波が広まっていきました。ランドマークタワー、帆船日本丸や観覧車などドラマの背景にちらりと見えただけでも一目で横浜とわかる風景です。さらに横浜みなと博物館、よこはまコスモワールド、原鉄道模型博物館、カップヌードルミュージアム、汽車道など、年齢を問わず誰でも楽しめます。
そして、新しいシンボルとして歴史的建造物「横浜赤レンガ倉庫」があります。明治・大正時代に国が模範とする倉庫として創建され、日本最初の荷物用エレベーターや消火水栓、防火扉など最新鋭の設備が整えられ、1913年に完成しました。耐震のためレンガの中に鉄材を埋め込む手法が採用され、今はその中で買い物や食事が楽しめますが、内観・外観ともに当時のデザインのままです。その先には1867年(慶応3年) 西波止場が弓なりに湾曲した形に築造され、その形状から象の鼻と呼ばれるようになり、今では象の鼻パークとして、開港の丘・象の鼻テラスがあります。
山下公園に向かう途中には、多くの客船が停泊する国際客船ターミナルの横浜大さん橋があります。明治の末頃から1970年頃までは「メリケン波止場」とも呼ばれていました。愛称「くじらのせなか」の屋上床はブラジル産イペを使用したウッドデッキになっており、さらに天然芝の緑地を設けられています。ここには、ベイブリッジの夜景は必見で、振り返るとみなとみらいの赤レンガや観覧車が港町の彩りを華やかに演出しています。
行き交う船をながめながら、ひと時を過ごせる山下公園を散歩すると、「北太平洋の女王」と呼ばれ、アインシュタインやチャップリンが船旅を楽しんだ氷川丸が係留されています。
山下公園に隣接して、横浜港のシンボルともなっているマリンタワーがあり、かつては灯台としても機能していました。展望フロアからは横浜港を一望でき、みなとみらい21地区や横浜ベイブリッジのほか、本牧埠頭などの工場夜景も楽しめます。
港を見下ろす高台には「港の見える丘公園」があります。いしだあゆみの楽曲「ブルー・ライト・ヨコハマ」は港の見える丘公園から見た、横浜と川崎の工業地帯の夜景をイメージしたものです。ちなみにオフコース(小田和正)の「秋の気配」の歌詞に出てくる“港が見下ろせるこだかい公園”とはこの公園のことを指しており、B’zの「TIME」でも“港が見渡せる丘”として歌われています。さらに、テレビドラマ「あぶない刑事」の中にもよく登場していました。
外国人墓地、単に外人墓地とも言いますが、ここには19世紀から20世紀半ばにかけての40ヶ国余、4400人余りの外国人が葬られています。
少し歩を進めると、山手地区に位置する西洋館(山手111番館、横浜市イギリス館、山手234番館、 エリスマン邸、ベーリック・ホール、外交官の家、ブラフ18番館)が点在します。開国以降外国人駐留地としてフランスやイギリスのレトロな外観の公邸・私邸が残っていて、異国情緒あふれる街並みから文明開化の軌跡を学ぶことができ、歴史好きな人にはたまらない場所です。
横浜スダジアムの近くには、過去には唐人町や南京町と呼ばれた日本最大かつ東アジア最大の中華街があります。開港と共に一種の租界として造成され、今や約0.2平方キロのエリア内に500店以上の店舗があり、有名な善隣門をはじめ東西南北の「守護神」である4基のほか、計10基の個性豊かな牌楼が街を守っています。
中華街の中には、住む人々の心の拠り所として親しまれてきた関帝廟もあります。関帝廟の本殿は中央に関羽を祭り、右側に小説「三国志演義」で養子の関平(史実では実子)、左側に同じく「演義」に登場する配下の武将周倉の二神をそれぞれ祭っています。ここはパワースポットでも有名です。中華街は元々風水的にとても良い場所なのですが、さらに関帝廟は風水的に一番良い場所の中心部にあります。「悪運、悪縁を断ち切る」とも、商売の神様として「財運に恵まれる」とも言われ、廟内は線香のかおりでいっぱいです。
港町はGHQによる占領により近年まで米軍キャンプ地があり、ジャズの香りが残っています。ニューオーリンズスタイルから始まりデキシーランド・スウィング・ブルースなど、伊勢佐木町・野毛・関内などには多くのジャズバーがあり、夜の彩りを濃くしています。
海と暮らす街として、世界に羽ばたき、そして世界を受け入れる場所です。会員の皆様のみならずお孫さんも含めたご家族にも、風景と食事も味わっていただければと思います。(神奈川県内科医学会会長 宮川政昭)